三体2 黒暗森林 下(書籍)
【読み】 さんたいにこくあんしんりんげ
三体2 黒暗森林 下(書籍)【 さんたいにこくあんしんりんげ】

太陽系に迫る三体世界の巨大艦隊に対抗する最後の希望は、四人の面壁者(ウォールフェイサー)。人類を救う秘策は智子(ソフォン)も覗き見ることができない、彼らの頭の中だけにある。面壁者のひとり、羅輯(ルオ・ジー)が考え出した起死回生の“呪文”とは? 一方、かつて宇宙軍創設に関わった章北海(ジャン・ベイハイ)もある決意を胸に三体世界に立ち向かう最新鋭の宇宙戦艦に乗り組んでいた。全世界でシリーズ累計2900万部を売り上げたベストセラー『三体』衝撃の第二部。

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三体シリーズの第一部では、不可思議な現象「ゴースト・カウントダウン」とその正体に戦慄し、絶望する。

その絶望がスタートラインとなっている第二部では、文明の存続のために残された四世紀という時間で、人類がいかなる生存戦略を取るかが重厚に描かれる。

 

面壁計画のコンセプトを聞いたとき、まるで読者に対して「これからこの小説では叙述トリックがふんだんに出てきますよ。さぁ、あなたに見破れますか?」と投げかけられているように感じ、なんて面白い設定なんだろうと心が躍った。

しかしその期待は裏切られ、一度物語は予想しない方向に転がり始める。面壁計画は蛇足だったのかと思いきや、さらに翻って最後はそれが要となって物語が終わる。見事。

 

下巻に入って登場する、タイトルにもある暗黒森林(作中では黒暗ではなくこう表現される)理論は、フェルミのパラドックスの説明としてよくできていると思った。

物語終盤で、最後の、そして真の面壁者として羅輯が三体世界と相対する場面では、この理論を武器に、地球世界と三体世界そのすべてを人質に取り、2つの文明の対立を呆気ないほどあっさりと、だが印象深く収束させてくれた。

 

それにしても、作中の大衆の感情や世論が、不確かな情報にいとも容易く振り回され、時には狂喜乱舞、また時には阿鼻叫喚となるのは、まるで現実のネット世界を見ているようで・・・

 

訳者あとがきによると、第三部では物語のスケールがさらに飛躍していくらしい。楽しみだ。