ひろです。

三体シリーズの第一部では、不可思議な現象「ゴースト・カウントダウン」が起き、それが異星文明の侵略によって地球に送られた量子スーパーコンピュータ「智子」の仕業であることが判明。

地球文明より圧倒的に進んだ技術力を持つ三体文明が地球を侵略せんとするその事実に戦慄し、絶望する。

その絶望がスタートラインとなっている第二部では、文明の存続のために残された四世紀という時間で、人類がいかなる生存戦略を取るかが重厚に描かれる。

 

物語の中核となる面壁計画のコンセプトを聞いたとき、まるで読者に対して「これからこの小説では叙述トリックがふんだんに出てきますよ。さぁ、あなたに見破れますか?」と投げかけられているように感じ、なんて面白い設定なんだろうと心が躍った。

しかしその期待は裏切られ、一度物語は予想しない方向に転がり始める。面壁計画は蛇足だったのかと思いきや、さらに翻って最後はそれが要となって物語が終わる。見事。

 

下巻に入って登場する、タイトルにもある暗黒森林(作中では黒暗ではなくこう表現される)理論は、フェルミのパラドックスの説明としてよくできていると思った。

物語終盤で、最後の、そして真の面壁者として羅輯が三体世界と相対する場面では、この理論を武器に、地球世界と三体世界そのすべてを人質に取り、2つの文明の対立を呆気ないほどあっさりと、だが印象深く収束させてくれた。

 

それにしても、作中の大衆の感情や世論が、不確かな情報にいとも容易く振り回され、時には狂喜乱舞、また時には阿鼻叫喚となるのは、まるで現実のネット世界を見ているようで・・・

 

訳者あとがきによると、第三部では物語のスケールがさらに飛躍していくらしい。楽しみだ。