先ほど配信で一気見した。観るべき作品かどうかで言えば観るべきだろう。人間は太古の昔から、どうでもいい他人とどうでもいい話をするときのために、流行りの曲を聴いたりだとか流行りのドラマを観てきたのだから。既に流行っているものだから、あえて勧めるまでもないだろうけど、それで終わりにするとレビューにならないので何か適当なことを付け足そうと思う。このドラマは同情の余地もない悪役が正義マンに論破される様を描く、いわゆる勧善懲悪モノだ。このドラマの悪役に対し「こんなに分かりやすい悪役なんて現実にはいねーよ」と毒づく人もいるけれど、残念ながらああいうのはいる。どんな教育を受けたのか、あるいは何を食って育ったせいなのか、さっぱり想像できないけど本当にいる。そのような手合いに出会うたびにぼくは「マジか……コイツ、漫画かよ」と感心させられてきた。そして、そいつらが現実で倒されることなど滅多にはないと学んだんだよ。勧善懲悪がファンタジーとして受け止められる社会って残念だよな。誰もが正しさを求めるけれど、正面切って悪と対峙できる奴などそうはいない。だからファンタジーになる。このドラマの視聴率から察するに、皆が現実で目の敵にしてる悪党たちの大半もきっと、このドラマを観ながら半沢直樹を応援しているんだぜ。中学時代にぼくをボコったバスケ部のアホが文化祭のステージでブルーハーツの「人にやさしく」を歌っていたのとだいたい同じような感じだな。人は、やって良いことと悪いことの違いを知りながらもなお悪でいられる。手の届く範囲で身の安全を確保しながら荷担できるパターナリスティックな正義に手を伸ばしたがる。それもまた悪となり得ることを知らないのか知らないフリをしているのか、いずれにしろ愚かよな。罪悪感なく殴れるサンドバッグとして同情の余地もない悪党の姿をフィクションに求めてしまう程度ならばまだ可愛げがあるのかも知れないね。