にゃーにゃー
戦時下で行われた米兵捕虜への人体実験の実話に基づく創作。
生きたまま米兵を切り刻んだ主人公ら二人の医局員は戦争犯罪者ではあるが、どこにでもいる典型的な日本人。
小市民的な医局員すぐろは意思決定を放棄して実験に加わり消極的な見殺しをする。一方、体裁屋である医局員の戸田は、発覚したり責められるようなことがなければ何をしても良心の呵責を感じない。
キリストのような絶対的な神を持たず、上役に従属して生きる日本人の意思や良心の薄っぺらさを鋭く批判する。
戦後に戦時下の虐殺やレイプを武勇伝として語りだす復員兵や、米兵のキモを試食会に出すから提供しろと命令する軍医などグロテスクな人間に彩られている。神の存在を信じるヒルダだけがまともに思われるが、この生体解剖実験を執り行った橋本教授の夫人におさまっているので救いようがない。
死がありきたりな戦時下の、更に終末医療の現場である病院という舞台が、極限状況における人間の狂気を加速させている。