海と毒草(書籍)
【読み】 うみとどくそう
海と毒草(書籍)【 うみとどくそう】

『海と毒薬』(うみとどくやく)は、遠藤周作小説1957年に発表された。

太平洋戦争中に、捕虜となった米兵が臨床実験の被験者として使用された事件(九州大学生体解剖事件)を題材とした小説。テーマは「神なき日本人の罪意識」。第5回新潮社文学賞、第12回毎日出版文化賞受賞作。熊井啓監督で同名の映画が製作された。

ウィキペディア(Wikipedia)より

みんなの感想

    戦時下で行われた米兵捕虜への人体実験の実話に基づく創作。

    生きたまま米兵を切り刻んだ主人公ら二人の医局員は戦争犯罪者ではあるが、どこにでもいる典型的な日本人。

    小市民的な医局員すぐろは意思決定を放棄して実験に加わり消極的な見殺しをする。一方、体裁屋である医局員の戸田は、発覚したり責められるようなことがなければ何をしても良心の呵責を感じない。

    キリストのような絶対的な神を持たず、上役に従属して生きる日本人の意思や良心の薄っぺらさを鋭く批判する。

    戦後に戦時下の虐殺やレイプを武勇伝として語りだす復員兵や、米兵のキモを試食会に出すから提供しろと命令する軍医などグロテスクな人間に彩られている。神の存在を信じるヒルダだけがまともに思われるが、この生体解剖実験を執り行った橋本教授の夫人におさまっているので救いようがない。

    死がありきたりな戦時下の、更に終末医療の現場である病院という舞台が、極限状況における人間の狂気を加速させている。

実際に起きていた太平洋戦争中に、捕虜となった米兵が臨床実験の被験者として使用された事件を元に書かれた小説ということで、興味を持ち読みました。

作品紹介には『神なき日本人の“罪の意識”の不在の無気味さを描き、今なお背筋を凍らせる問題作。』と書かれています。個人的にはもっと日本人特有の汚さを書いているのかと思ったのですが、「立場的に仕方ない」という理由で罪を犯すのは人間全般に言えることなので、少し物足りないと感じました。

一応、罪意識とは人間社会で作られた感情でしかない、人間本来が持っている感情ではないと再認識する作品。

映画もあるそうなので機会があったら観てみたいと思います。