「三体」の一作目は、現実世界でわかっている物理学・科学をもとに、多少のフィクションを加えた内容で物語が構成され、描写が非常にイメージしやすい。
だからこそ襲い来る三体文明の脅威がリアルに感じられ、読者は心から戦慄する。
二作目は、作中で突然200年の時をジャンプし、物語は遠い未来の話となる。
科学的な描写のリアリティは一作目に劣るが、代わりにSFとしての魅力がぐんと増し、物語そのものの面白さは一作目を凌ぐ。
そしてこの三作目では、前二作が霞むほど物語のスケールがインフレする。
多次元宇宙や低次元宇宙、相対性理論に基づく時間跳躍、物理法則の改変、さらにはビッグクランチや並行宇宙、宇宙の創造に至るまで、今の科学からするとまだファンタジーと呼んでも差し支えないような領域にまで話が及び、物語は文字通り神話の域に達する。
三作を通して描かれるのは、一千万年以上にも亘る、気の遠くなるような物語。
読み終えた後は、まるで一連の歴史の授業を受け終わったかのような、あるいは壮大な夢から目覚めてぼんやりとしているような感覚に陥る。
三部作を合わせた長さは、文庫本にして3000ページに迫るらしい。
そんな長さを全く感じさせない、本当に面白いシリーズだった。