本作の最大の評価点は、分かり易さとテンポの良さに尽きます。

よく王道という言葉をこの作品の評価で目にしますが、それは"誰もが共感し得る"ポイントを外していないということ。

主人公が挫折しても無駄にクヨクヨせず、自身が果たさなければならない目的に向かって寄り道をせずに「成すべきこと成す」、全体で芯の通った作品です。

老若男女問わず、それこそ普段漫画を読まない人にとっての入り口としても、本当に誰にでもおススメが出来る作品だと思います。

以下主観です。

・キャラクターの魅力

 本作でまず気になったのがキャラクターの魅力の描き方について。

 意図したものかはわかりませんが、キャラ全体を通して非常にトゲが少なく、誰にでも好かれる(嫌われない)要素を持った人物が多いです。

 人格がコロコロ変わってしまっても不自然ですが、"緩急"というものは魅力を付ける部分である程度必要だとは思っていて、そのキャラの"尖っている"部分が

 最初は誰にも理解されなかったけど、展開が進むにつれて"尖っていたからこそ"カッコいい、となるような側面が無い。

 実際はそういう緩急を持ったキャラは敵味方両サイドにいるが、ワンシーン挟んで180°ガラッと変わってしまうという意味で印象が変わりすぎるところがあります。

 (冒頭のテンポという要素とトレードオフではありますが)

 鬼サイドのバックボーンがわかりやすい例ですね。

・展開の波

 展開自体は確実に核心へと進み続けているはずなのに、中盤からその盛り上がりが打ち止めになっている感が否めない。

 むしろそのような状態に陥ると、盛り下がることが多いのですがしっかり最大をキープしたままゴールイン(完結)したという感覚。

 長尺の少年漫画で「いつ完結するんだ・・・」とダラダラ連載が続いている漫画に比して、むしろ清々しくて良いくらいですが、

 微弱な山有り谷有りで後半につれて"印象"が残りにくいというのが正直なところ。

・アクション(戦闘)

 アニメ放映開始をこと切りに、爆発的人気が出たのはこの要素が大きいと思います。

 本作品の戦闘シーンは弱者が圧倒的強者に挑むという構図から、アドリブでのアイディア勝負になることが多く、多彩で面白くはあるのですが

 "鬼気迫る迫力"や"鬼を殺した"といった爆発感に欠けると感じました。画力が追い付いていないということではなく、作風とのマッチだと思います。

 アニメは映像でしか成しえない表現を巧みに使い、原作の独特な作風や表現を維持しながら、とても見ごたえのある出来となっていたので。

 もっと個人的な趣向の話をしてしまうと、刀剣アクションということで戦闘における術理をもう少しそれぞれの呼吸法と絡めて深堀りして欲しかった。

 (例えば「水の呼吸」が相手の攻撃を受け流すスタイルに優れていたとして、踏み込む間合いや体重移動の訓練を人並み以上に積まなければならない、など。。。)

・セリフ回し

 セリフ回しが下手、とかではなく。

 冒頭で言った通り分かり易さに関して突出しているため、そこまで複雑な展開にはなっていないのに、やたら説明的で少し丁寧すぎるセリフや心理描写が多い。

 そのまま扉絵にしてしまえるような、簡潔でバシッとキマる表現があれば、このシーンが最高だ!と語らえる作品になったと思うのですがこの独特さは肌に合わなかったかも。

自分は捻くれていると思っています。