ユーラシア大陸をバイクで横断したことがある

映画・本記録用

インターステラー見ましたか?めっちゃ面白いですよね。

どんな話だったか覚えていますか?

なんか地球温暖化で地球に住めなくなって、宇宙に行く…ブラックホールとか重力みたいな話?

インターステラーは壮大なスペースオペラ、親子の絆ものの映画なのですが、クリストファーノーラン監督が映画の背景となる舞台設定にも趣向を凝らしているので解説していきたいと思います。

①表設定:時代設定

『2001年宇宙の旅』の時代設定は言うまでもなく2001年です。では、インターステラーはいつの話と設定されているのでしょうか?

正確な年は決まっていませんが、主人公の父が「私が子供のころは人口は60億人だった、毎日が新しい発明にあふれていた」と言っています。

彼の年齢はおよそ60〜70歳の様に見えます。彼のセリフの「子供の頃」とはおそらく10歳前後を指しているのでしょう。

地球の人口が60億人だったときは1998年です。

1998年:10歳

60歳:2048年

舞台は2048〜2058年ごろの設定とわかります。

余談ですが、この映画の発表年は2014年です。このおじいさんは20代視聴者の将来の姿です。

②表設定:舞台設定

この映画は今から約30年後の未来を時代設定としていますが、

1、世界は第三次世界大戦を経験しており

2、環境問題では砂嵐が吹き荒れ、地球に人間が住めないほどになりつつある

この映画の中で第三次世界大戦が言及されるシーンは多くありますが、インド空軍のドローンを捕獲するシーンでは10年前に空軍が解体されたことがハッキリと書かれています。

インターステラーの世界は定期的な砂嵐が発生しており、主要な農作物を枯らすウィルスが蔓延しています。

この設定は「地球温暖化がこのまま進むとこうなる」という見方もあると思いますが、気候変動だけで30年後に環境はここまで荒廃するでしょうか?

以下が私の解釈です

第三次世界大戦によって、敵国の主要都市または国土全体が爆撃を受け廃墟になり砂嵐が発生。崩れた大量のコンクリートのビルがその嵐に削り取られ、砂嵐を巨大化させた。

この他大陸で発生した砂嵐がアメリカ大陸に届く、というSFなのではないかと私は考えています。

また、農作物を枯らすウィルスは敵国の化学兵器なのかな?とも考えましたが、わざわざ人間の悪意を入れずとも、このように考えることができるのではないでしょうか。

敗戦国での農業は農薬・化学肥料・水資源の不足、また大規模な砂嵐で傷つき枯死する農作物が多く、その中からはカビなどのウィルスも多く発生する。

ウィルスは砂嵐に運ばれてアメリカに到達した。

現代の農業は規模が大きく、規模が大きければ強いウィルスが発生する確率も高くなります。

この様に考えた方が終戦後の資源が少ない世界で人為的にウィルスを発生させるより無理がないと考えました。

③裏設定:社会システム

2001年に人類は宇宙旅行を出来ませんでした。現在火星にすら人間は到達していません。

なぜかと言うと、コスパが悪かったからです。大金が必要なのは当然ですが、それを超えるような必要性がありません。

いずれ宇宙旅行は出来るけど、自分が生きてるうちには行けないかな…?と思う人が多いのではないでしょうか。

それではクリストファーノーラン監督がスペースオペラの映画を撮りたい!と思っても時代を21XX年に設定しなくてはいけません。

監督は舞台を現在から30年後とするために第三次世界大戦後の近未来という設定にしました。

しかしその設定の上で社会を描くと色々な辻褄合わせが必要になります。

ここでクリストファーノーラン監督は全ての辻褄をあわせる裏設定を採用します。

「第三次世界大戦後、アメリカは共産主義化する」

資本主義的な自由経済では環境破壊に歯止めがきかない

これが一番大きな理由だと思いますが、この裏設定で映画のあらゆるシーンに説明がつきます。

インターステラーでのアメリカ版共産主義のポイントです

①企業は全て国営になり、ほとんどの企業は解散させられている

②生活に必要なものは配給制

③国民の仕事は農業

④中央集権的な教育体制

以下に例を挙げてみました

服屋さん

おそらくインターステラーの世界で、服は古着・倉庫に在庫していた新古品を配給で配っています。服を作る企業が地球滅亡寸前の今必要かと言うと、着ることのできる服は山のようにある。

それが2050年ごろの世界を描いているはずなのに服装が未来的でない理由です。

家具がほぼ現代と変わらず、むしろ電化製品はほとんどありません。外に電線がありますが、あまり立派ではない。大規模の発電所はテロの対象になるので放棄されています。電機メーカーは国営化し一般人向けの製品は作っていません。扇風機などの個人で直せる様な古い家電は残っています。

未来の話なので電気自動車が走っているかと思いきや、普通のガソリン自動車です。新しく自動車を作るより既存の自動車を修理した方が環境に優しいです。また、燃料はガソリンかは不明ですが、バイオエタノールで走っている可能性もあると思います。

教育

小学校のシーンがありますが、アポロは月へ行っていないなど驚きの教育方針で、教科書は“改訂版”が使われています。プロパガンダ教育は完全にソ連のそれです。

ソ連での教育にも大学はありモスクワ大学などの超名門校もあります。ただソ連では集団主義教育というのがあり・・ざっくり言うと中等教育まで終えると学校での実力テストで、農民、研究者、スポーツ選手、軍人など進路が決められます。

反科学的な教育方針を責める主人公に対し、旧教育を受けていた学校の先生(黒人男性)は申し訳なさそうに目を伏せますが、新しい教育を受けた若い先生(白人女性)は何を言っているのかと目を丸くする対照の演技をしているのも面白いです。

ソ連版NASA

自由主義を廃して共産主義化したアメリカではNASAが地球脱出を研究しています。

よく共産圏の科学者は悪の組織とかマッドサイエンティストとして描かれますが、インターステラーは舞台が共産主義なのでマッドサイエンティストが出てきます。

アンハサウェイ(ブラウン博士)です。

ブラウン博士のどこがマッドサイエンティストかというと

受精卵を人工培養して人類の存続をはかるというモラル的に絶対ダメなことなのですが満面の笑みで説明してくれます。

国民は科学を理解していないので、科学者は孤独ですが、独立した環境で、ある程度の倫理問題は無視して目的へ直線距離的に進むのでこうなるのでしょうか。

学校のシーン同様、次世代であるアンハサウェイは「倫理的にダメ!」と言われると困惑した演技をし、老ブラウン博士は気まずそうな演技をします。

おわりに

ヴェルヌという人が書いた『十五少年漂流記』という小説があります。

無人島に流れ着いた少年15人がたくましく2年間を協力しながら生き抜くという冒険小説です。

数十年後、ゴールディングという嫌なやつがいて同じように無人島に流れ着いた少年達がたくましく生き…抜けないという意地悪な小説を書いています。

まず15人も子供達がいたらイジメられるやつが出てくるだろうし、子供がリーダーの言うことを聞いて仕事を続けられる訳がないし、夜には怖がりだす子供もいるだろう…などというツッコミどころに全部つっこんだ同人誌(2次創作)だと思ってください。

本作は『2001年宇宙の旅』が実現しなかった現在において、ツッコミどころに全部つっこんだ二次創作です。

三時間弱あるこの映画で、前半の40分(ロケット発射まで)を使って細かい設定が書き込まれているので、是非その点も見ていただければと思います。

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コメンタリーや設定資料を見ずにここまで書いてしまったので、間違いなど指摘いただけると嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。