春の訪れが待ち遠しいある日、楡野卯月は家族と別れ、北海道を後にした。東京の大学に通うためだ。新しいアパート、新しい学校、新しいお隣さん、新しい自転車、新しい本屋、そして桜の花びらが舞う、新しい風景。卯月の身の回りには、様々な“新しいこと”が、めまぐるしく立ち現れる。クラスの最初のオリエンテーションで自己紹介をした卯月は、こんな質問をされてひどく当惑した。「なんでこの大学を受けたんですか?」………受験の動機。そう、卯月には人に言えない“不純な動機”があったのだ。
東京でひとり暮らしを始めた女子学生の、ある「不純な動機」と小さな冒険の日々…人間がひとりで生きていくことの自由と誇り、恋することの喜びを讃えた、松たか子主演・岩井俊二監督作品「四月物語」